概要
今回はTOZOより発売の完全ワイヤレスイヤホン『TOZO NC9』をレビューしていきます。
提供:TOZO

TOZOとは
TOZOは、2015年に誕生したテックブランドです。ブランドコンセプトは「Tech Around You(あなたのそばのテクノロジー)」。最新のテクノロジーを日常に取り入れやすい価格帯で提供することを目指しているそうです。現在、TOZOの製品は50以上の国と地域で販売されており、北米・ヨーロッパ・日本をはじめ、インドや南米、オーストラリアまで幅広く流通しています。販売チャネルはAmazonやeBayなどのオンラインストアが中心で、コストパフォーマンスの高さが評価されています。
TOZOのワイヤレスイヤホンは以前より認知はしていましたが使用するのは初なのでどんな特徴があるのか楽しみです。
製品の特徴・スペック、使用して良かった点・気になった点等を語っていくので、ご興味がありましたら是非最後までご覧ください。
製品の主な特徴
高音質・専用アプリ対応
独自開発の高感度ダイナミックドライバーを搭載し、低音から高音までバランスの取れたサウンドを実現。圧縮音源も高解像度で再現し、臨場感あるリスニング体験を提供します。
専用アプリに対応し、32種類のEQプリセットや細かな音質調整が可能。ユーザー投稿のEQプリセットも利用でき、好みのサウンドを手軽にシェアできます。
ANC&ENC搭載
ハイブリッドアクティブノイズキャンセリング(ANC)が周囲の騒音を遮断し、静かな環境で音楽に没入可能。
通話時はENC技術により雑音を低減し、クリアな音声を届けます。
タッチコントロールのカスタマイズ
高感度タッチセンサーを搭載。再生/停止、曲送り、音量調整などを直感的に操作可能。アプリから各操作を自由に割り当てられ、誤操作防止にも対応しています。
長時間再生&LEDディスプレイ
- ANCオフ時:イヤホン単体 約12~14時間、ケース併用で約55~58時間
- ANCオン時:イヤホン単体 約8~10時間、ケース併用で約40~42時間
LEDディスプレイでバッテリー残量を一目で確認できます。
軽量・快適な装着感
イヤホン単体わずか4.9g、ケース込みで45gの軽量設計。長時間装着しても疲れにくく、持ち運びにも便利です。
Bluetooth 5.3 &高音質技術
最新規格Bluetooth 5.3で安定した接続と低遅延を実現。
「Origx 2.0」音響技術と「Bass+」により、深みのある重低音と透明感ある高音を再生します。
IPX8防水対応
汗や雨に強い防水性能を備え、スポーツやアウトドアでも安心。※充電ケースは防水非対応。
スペック・製品仕様
項目 | TOZO NC9 |
---|---|
ドライバー | 10mmダイナミックドライバー |
イヤホン形状 | ラウンド型 |
接続規格 | Bluetooth 5.3 |
対応コーデック | SBC/AAC |
再生時間 (AAC時) | ANCオフ: イヤホン単体 約12~14時間 ケース併用 約55~58時間 ANCオン: イヤホン単体 約8~10時間 ケース併用 約40~42時間 |
防水性能(イヤホン本体のみ) | IPX8 |
ANC | 〇 |
マルチポイント | ✖ |
急速充電 | 〇 |
ワイヤレス充電 | ✖ |
空間オーディオ風機能 (疑似的な音場拡張) | ✖ |
低遅延モード | 〇 |
装着検出 | ✖ |
AI機能 | 〇 |
通常価格 | 5,990円 |
10㎜ダイナミックドライバーを搭載。
イヤホン本体の形状は国内ブランドではよく見かけるラウンド型です。
Bluetoothバージョンは5.3に対応。対抗コーデックはSBC/AAC。
再生時間はイヤホン単体で最大約12~14時間、ケース併用で約55~58時間とロングバッテリーな製品が増えた現在の水準で考えてもかなりのロングバッテリーです。
イヤホン本体の防水性能はIPX8と規格上最大値で、真水であれば長時間水没しても問題無いレベルとなっている為汗や雨は全く問題ありませんし、汚れた際に水洗いも可能なので清潔に保ちやすいのもポイントです。
アクティブノイズキャンセリング機能に対応。
資料を見漁ったり実際に試してみましたが、どうやら2台の機器に同時接続可能なマルチポイント機能には非対応のようです。近年発売されているワイヤレスイヤホンではほぼマスト機能となっているので非対応は珍しいですね。その為複数デバイスを使い分ける前提の方には不向きと言えます。
ワイヤレス充電には非対応ですが急速充電には対応しています。
その他、特筆すべき機能としては専用アプリを経由してAIを活用した複数の機能を利用可能です。
競合の最新モデルと比較するとやや非対応の機能が目立ちますが、結論から言うとこのイヤホンの最大の訴求点はこの『AI機能』にあると感じました。機能については後ほど詳しく解説します。
通常価格は5,990円とエントリー帯の中でもお手頃で、手に取りやすい価格も魅力です。
内容物

- イヤホン本体+充電ケース
- 充電ケーブル
- イヤーピース6組(1組装着済み)
- 説明書類
以上になります。

付属のイヤーピースはシリコンタイプ。台形に近い形状のものとドーム型の2種類が各3サイズずつ付属しています。質感も滑らかで良いです。
外観


充電ケースは指紋の目立ちにくいマット仕上げ。開口部周りは光沢のあるラインを残す事でデザインにメリハリをつけ、安価ながらチープさを感じさせない工夫が感じられます。
ケース前面にはLEDディスプレイが搭載されており、一般的な点タイプのLEDに比べケースとイヤホンの充電残量が格段に分かりやすいです。ケースの充電残量は文字が大きく、黒ベースの白文字なので視認性がとても高い点も良いですね。
ケース背面には充電ポートとペアリングリセットボタンを搭載。


ケース上部にはブランドロゴの刻印があります。コスパブランドはロゴマークの主張が強いブランドが多々あるのでそれが気になるという人も結構いますが、シンプルなロゴと刻印という主張少なめな方法によってかえって上品に見えますし他人の目を気にせず使いやすいです。
それとこれは個人的評価ポイントなのですがケース上面と底面が平らになっているので置くときに安定しますし、立てて置けるので省スペースで済みます。
100円玉とのサイズ感比較↓

充電ケース、本体共にコンパクト設計です。

ケースを開くとこんな感じ。
蓋は90以上開いて固定され、イヤホン本体は大きくせり出している為取り出しやすいです。


イヤホン本体はラウンド型。ケース同様マット仕上げの部分と光沢の部分でメリハリのあるデザインでロゴデザインも控えめ。安価ながら上品な印象です。ロゴ部分がタッチセンサーになっています。

ノズルは丸形でノズル口径は5mm、ノズル長は約3mmでワイヤレスイヤホン向けの他社製イヤーピースでカスタム出来そうです。


イヤホン本体片側約4.9g、ケース込みで約42.9gと本体・ケース共に軽量です。
因みにカラーはブラック、ブルー、レッドの3色展開されています。


ブラックとブルー比較。手元にはありませんが、珍しいレッドも良さそうですね。
専用アプリについて


専用アプリ『ホーム』タブではノイズキャンセリングモードの切替とイコライザー設定が行えます。
ノイキャンモードは風ノイキャンや強度を調整できるカスタムモード等複数用意されており充実しています。


イコライザーは設定済みのプリセットと、自分で細かく調整可能なカスタムイコライザーが備わっています。プリセットだけで32種もあるのでどれかしら好みのものが見つかるでしょう。
更に他のブランドに無い面白い機能として自分が作成したカスタムイコライザーをアプリ内のコミュニティに投稿する事ができ、同じように他のTOZOユーザーが作成したカスタムイコライザーを使用する事もできます。

ホームタブ右上の歯車マークから『設定』項目を展開でき、ここでは低遅延モードのオンオフ、コントロールカスタマイズ、ファームウェアアップデート、イヤホンを探す機能等を使用可能です。侵入した水分を振動で排出する排水機能も搭載されています。


イヤホンを探す機能とは別ですが、アプリに位置情報権限を許可する事でホームタブの左上から地図を表示でき、最後にイヤホンが切断された場所を確認する事ができるようになるのでイヤホンを探す機能と合わせれば紛失した際に役立ちそうです。

そして衝撃を受けたのがこの『AI』タブ。なんとNC9等の対応機種は『会議記録』『即時通訳』『同時通訳』『AIチャット』の4つのAI機能を使用する事ができます。

『会議記録』は所謂文字起こし機能で、マイクから拾った音声を文字に起こしてくれます。
会議の議事録作成やちょっとした音声メモ等に便利です。ご覧の通り、数字や英語の精度もかなり高いです。

『即時通訳』はボタンを押している間話した内容を指定した言語に自動翻訳してくれます。
こちらも精度はかなり高いです。


『同時通訳』は画面を2分割し、自分が話した言語を指定言語に翻訳して反対側に表示させる事ができます。これは言葉が通じない外国人との交流時等に役立ちます。日本語と英語どちらも試してみましたがどちらも精度が高いです。

『AIチャット』は所謂ChatGPT的なAIチャットが可能で、様々な質問に答えてくれます。
音声入力とテキスト入力に対応し、回答は音声での読み上げも可能です。
これらの機能は日本語、英語の他中国語、韓国語、ロシア語他主要言語には大体対応しています。
また、マイクの入力はワイヤレスイヤホン本体とスマホマイクを選択可能です。
AIガジェットに興味がある方には伝わると思うのですが、AI翻訳機能を搭載したワイヤレスイヤホンやAI文字起こし機能を搭載したボイスレコーダー等は数万円以上するものが殆どで、更に買い切りではなく追加で課金が必要なサブスク制だったりするのですが、このTOZOアプリでは無課金で文字起こしや翻訳、チャットが利用できてしまいます。NC9の通常価格は約6000円で買えてしまいますから、通常のワイヤレスイヤホンとしての用途に加えこれらのAI機能まで無料で使えてしまうのはかなり異常なコストパフォーマンスと言って良いと思います。文字起こしや翻訳機能を搭載したAIガジェットを探している人にとっても安価なTOZOワイヤレスイヤホンでこれらの機能が無料で使えるというのは完全に大穴なのではないでしょうか。

そしてなぜかAIタブの中にヒーリングサウンド等を再生できるホワイトノイズ機能も使用する事ができます。雨音や自然の環境音等、チルしたい時や集中したい時に好きなサウンドを選んで再生できます。

更に面白いのは、TOZOアプリはSNS機能も備わっている点です。
『コミュニティ』では、文章や画像、動画を記載してコミュニティに投稿できる所謂X(旧Twitter)のようなSNSサービスを利用する事ができます。フォローやいいね、コメント等の機能も備わっており、ユーザー同士コミュニケーションを取る事もできます。世界中にユーザーがいるので日本人の割合は少なそうですが、海外の方の日常を垣間見るのも面白いです。

『製品』タブは割愛しますがTOZOの新製品情報等を閲覧、購入する事もできるようです。
『マイ』タブではその他の設定やカスタマーサポート、よくある質問の閲覧等が可能です。
専用アプリはイヤホンに関する機能に加えAI機能やSNSも利用できかなり充実しています。
使用した感想
装着感について


ただまるっとした形状と言う訳では無く、耳甲介腔にぴったりフィットするように人間工学に基づいて設計されたシェルの形はフィット抜群で、全体でしっかり支えられている安定感があります。人により多少異なるとは思いますが窮屈さは全く無く、圧迫感の無い丁度良いフィット感です。本体は約4.9gと軽量なので長時間装着しても重さで疲れてくることはありません。
また、耳甲介腔全体を覆うようなラウンド型なので遮音性が非常に高く、ノイキャンをONにしなくてもそれなりに環境音を減衰してくれます。
デザインも洗練されたシンプルな外観が良いですね。シームレスな丸みを帯びたシェルでは無くあえて角を造り面を複数作る事で光の反射具合が異なってハイエンドモデルのような上品さを演出しています。デザインや質感を工夫すれば安価でもかっこよくなるという良い例だと思います。
音質について
AndroidにてAAC接続で使用した感想です。
デフォルトだとバランスは低域重視のサウンドで、低音は沈み込みを感じる深さと空気感があり中高域は音の輪郭が丸く聴き疲れしにくいサウンドといった印象です。低音の空気感や重低音が好きな方に適したチューニングになっています。もちろん、それ以外のサウンド傾向が好みの方も豊富に用意されているイコライザー機能で好みに調整可能です。
私は中高域がくっきりした寒色系サウンドが好みなのでカスタムイコライザーでチューニングしました。

かなり極端ですが、低域の主張は残しつつもボーカルや高域をくっきりさせるように調整し、明るさ増し増しのサウンドで近年のポップスやエレクトロサウンドを気持ちよく聴けるようなチューニングです。せっかくなのでアプリに投稿してみました。NC9を購入された方は専用アプリから選択して使用できるので良ければ試してみてください。因みに、他の人が作ったカスタムイコライザーを更に自分で調整可能なので良さげなカスタムイコライザーを見つけていじってみるのも面白いと思います。
通話音質について
約0.5m隣で床置きタイプのクーラーを稼働させた状態でイヤホンから録音した音声を聞いてみました。
スマホマイクではがっつり乗ってしまう空調の稼働音は綺麗にノイキャンできていましたが、ノイキャンの影響かやや加工感のある音声です。聞き取りやすさに特に問題はありません。
主な機能について
アクティブノイズキャンセリング機能について
公式資料では最大⁻45㏈ノイキャンとの事ですが、最近競合ブランドから発売されている最大⁻50㏈以上の効力を謳っている強力ノイキャンモデルと同等、もしくはそれ以上の効力があるように感じられます。1万円以下どころかミドルクラス帯、ハイエンド帯を含めても強力な部類だと思います。あまりの効力に驚いたのでノイキャン効力に定評のあるAirPods Pro 2と効力を聞き比べてみましたがほぼ差が無いです。しかもエントリー帯で強力ノイキャンを搭載した製品は強度こそ高いもののかすかにホワイトノイズが聞こえたり、所謂質の部分でハイエンド帯の製品には一歩劣るかな、という製品が多いのですがこのNC9は効力だけでなく質も高く、ホワイトノイズ等も感じず静寂に近い、質の高さもAirPods Pro 2に近いです。同価格帯競合の強力ノイキャンモデルと比較するとラウンド型のメリットでもある物理遮音性の高さが吉と出ているように感じます。
外音取込機能も取込量が多く聞き取りやすいです。
低遅延モードについて
遅延テストアプリを用いて低遅延モードをONにした状態で10回計測した値の平均値から有線イヤホンで10回計測した値の平均値を引く方法で簡易計測したところ遅延は約90msという結果になりました。
動画鑑賞やカジュアルゲームでは特に気になりませんが、FPSゲームや音ゲー等わずかな遅延で大きく内容が変わってしまうジャンルのゲームには向かないと思います。
各AI機能について
文字起こしはカタカナや英語、数字といった部分も高精度で認識できておりGoogleドキュメントの文字起こしよりも遥かに優秀ですし、翻訳機能では私が試しに喋った発音の怪しい英語でも正しく認識できており、搭載されているAIの補完能力はかなり高く優秀だと思いました。これらの機能が特に制限無く無料で使えてしまって良いのでしょうか。
良かった点・気になった点
良かった点
・コンパクト軽量設計
充電ケース・イヤホン共にコンパクトかつ軽量設計で携帯時は嵩張りませんし、装着感も良く長時間の着用にも向いていてとにかく幅広い用途で扱いやすいです。
・価格帯最強クラスのロングバッテリー
ながら聴き需要や動画コンテンツの増加で連続で長時間使用する人が増えている昨今では単体10時間越えのロングバッテリーは快適さに直結します。一度満充電しておけば、一度の使用で充電切れになる事はまずないでしょう。
・最高等級の防水性能
殆どのワイヤレスイヤホンはIPX4~5で、最高等級のIPX8は貴重です。
あくまで規定に基づくテストでの結果なので過信は禁物ですが基本的にIPX8もあれば雨や汗だけでなく水没させても問題無いレベルなので軽いウォータスポーツでも使用可能です(海水や温泉での使用は避けてください)。汚れが気になったら水洗いも問題無くできるので衛生管理しやすい点も良いです。
・価格帯最強クラスのノイキャン
正直こんなに強力だとは思ってもみませんでした。良い意味で予想を裏切られる性能です。ミドルクラスからハイエンドクラスの強力ノイキャンモデルに迫る効力と質で、1万円以下の競合と比較しても約6000円でここまでノイキャンが強力なモデルを他に知りません。
・充実のアプリ機能
ノイキャンモードやイコライザー、SNS、各AI機能等アプリ機能がかなり充実しており、特にイコライザーの共有機能やSNS、AI機能等は他のブランドでは中々見ないTOZOならではの機能で新鮮でした。特にAI機能に関しては他ブランドのAI製品では数万円したり、サブスクで定額払わないと使用できないような有料級機能ですから、競合ブランドと比較しても圧倒的な強みと言えるでしょう。
気になった点
・マルチポイント機能非対応
最近ではほぼマストといって良いぐらいどのブランドも採用しているマルチポイント機能はどうやら非対応のようです。なので普段から複数のデバイスを同時に扱いたい人には不向きといえるでしょう。
・低遅延モードはアプリからしかONにできない
他ブランドではコントロール割り当てに対応していてイヤホン本体からのコントロールで適用可能なモデルが増えて来ていますが、現状割り当て項目には存在せず、アプリからしか適用できないようです。
総評

TOZO NC9は、約6,000円という価格帯ながら強力なアクティブノイズキャンセリング、最上位等級のIPX8防水、最大約58時間のロングバッテリーといった高い基本性能を備えています。さらに専用アプリでは32種類以上のEQ、コントロールカスタマイズに加え、文字起こしや通訳、AIチャットといった有料級のAI機能まで無料で利用可能で、競合には見られない独自性を発揮しています。一方でマルチポイント非対応やワイヤレス充電非対応といった点はやや弱みですが、総合的には価格を大きく超えた価値を持つ高コストパフォーマンスモデルといえます。
おすすめしたい人
- 高性能なノイキャンを低価格で試したい人
- 汗や雨を気にせずスポーツやアウトドアで使いたい人
- 翻訳・文字起こしなどAI機能に興味がある人
- 自分好みに音質を細かく調整したい人