概要
今回はQCYより発売の最新ワイヤレスヘッドホン『QCY H3S』をレビューしています。

提供:QCY
スペック・製品仕様
| 項目 | QCY H3 Pro | QCY H3S | SOUNDPEATS Space Pro | EarFun Tune Pro | Haylou S40 |
|---|---|---|---|---|---|
| 7,990円 | 7,280円 | 8,980円 | 8,990円 | 7,989円 | |
| カラー | ブラック / ホワイト | ブラック / ホワイト/グレー | ブラック / ベージュ | ブラック / ホワイト | ブラック/ ホワイト |
| 操作方法 | 物理ボタン | 物理ボタン | 物理ボタン | 物理ボタン | 物理ボタン/ タッチセンサー |
| ドライバー | 40mmDD | 40mm+13mm DD | 40mm+10mm DD | 40mm+10mm DD | 40mm+20mm DD |
| 対応コーデック | SBC / AAC / LDAC | SBC / AAC / LDAC | SBC / AAC / LDAC | SBC / AAC | SBC / AAC / LDAC |
| Bluetoothバージョン | 5.4 | 6.0 | 5.4 | 5.4 | 6.0 |
| 連続再生時間(ANCオフ) | 約55時間 | 約102時間 | 約151時間 | 約120時間 | 約90時間 |
| 連続再生時間(ANCオン) | 約40時間 | 最大58時間 | 約58時間 | 約80時間 | 約60時間 |
| 急速充電 | 対応(10分充電=最大5時間) | 対応(10分充電=最大7時間) | 対応(5分充電=最大4時間) | 対応(10分充電=最大15時間) | 対応(10分充電=最大5時間) |
| ANC(公式表記) | 対応(最大 -50dB) AUX、USB接続時対応 | 対応(最大 -56dB) USB接続時対応 | 対応(最大 -47dB) AUX、USB接続時対応 | 対応(最大 -45dB) AUX、USB接続時対応 | 対応(最大 -50dB) USB接続時対応 |
| マルチポイント | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| ゲームモード | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 空間オーディオ | 対応(疑似拡張) | 対応(疑似拡張) | 対応(疑似拡張) | 対応(疑似拡張) | 対応 |
| アプリ対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 発売価格(税込) | 7,990円 | 7,280円 | 8,980円 | 8,990円 | 7,989円 |
搭載ドライバーは40mm+13mmのデュアルダイナミックドライバーで、対応コーデックはSBC/AACに加え高音質コーデックLDACにも対応しています。
再生時間はANCオフで最大102時間、オンで最大58時間とロングバッテリーで、やや心許なかったH3 Proから大きく強化されています。10分で最大7時間使用可能な急速充電に対応しているので、朝充電が切れている事に気づいても支度している間に充電しておけばしばらく使い続ける事ができますし、有線接続にも対応しているのでいざとなれば充電が無くても使用可能です。
ノイキャン最大効力は公式表記の値で約⁻56㏈と事実であれば競合のノイキャン効力と比較してかなり強力な部類になるかと思います。実際の効力がどうなのかは使用した感想の方で後述します。
2台のデバイスに同時接続可能なマルチポイント、遅延を低減してくれるゲームモード、臨場感を高めてくれる立体音響モード等を搭載し、その他多数のアプリ機能を搭載しています。アプリ機能についても専用アプリについて、で紹介していきます。
発売価格は税込み7,280円といつも通り競合よりも更に手頃な価格で、内容を考えると通常価格ですら既に異常なコストパフォーマンスであると言えます。
内容物

- ヘッドホン本体
- 充電ケーブル(A to C)
- 説明書
以上になります。
外観

イヤホンの形式は耳を完全に覆うオーバーイヤー型。

ハウジングはブランドロゴも主張少なめなシンプルで洗練されたデザイン。
マット仕上げで落ち着きがあり、ビルドクオリティと上品さもハイエンドモデルさながらです。
普段はブラックを選びがちな私ですが、今作はオシャレな『グレー』カラーがラインナップされていたので選んでみましたがかなり良いですね。肉眼で見るとグレーというよりアイボリーに近い印象です。


ロール軸有で内側に90度回転可能で首掛け時も邪魔になりません。
折り畳みにも対応し鞄に入れて携帯する際もコンパクトにして持ち運べます。

ヘッドバンドは金属プレートがむき出しのデザインでオシャレです。
多くのエントリー帯製品のヘッドバンド周りはプラスチック素材や合皮で覆われているのですが、ここが意外とハイエンドモデルとは素材感やビルドクオリティに差が出て見た目のチープさを感じさせてしまう場所で、そこをあえて露出させる事でデザイン性を高めている、のかもしれません。


スライダーによりサイズ調節に対応。
軸プレートがむき出しなので見た目の印象がなんだか新鮮です。


イヤーパッドとヘッドパッドにはおそらくプロテインレザーと思われる素材が採用されており質感・肌触り共に良いです。イヤーパッドクッションは厚みがあり低反発で心地良いです。

ボタン・接続部は全て右側ハウジングに集約されています。
電源ボタンとボリュームボタンは複数の操作を兼ねているのでボタン数が少なくスッキリしています。
USBオーディオに対応しており有線接続も可能なのでヘッドホン側の充電が無くなっても使用する事ができます。更に有線接続時にもマイクやノイキャンを使用する事ができます。
ただし付属のケーブルはA to Cな上に短い為、最近のスマホで有線接続するにはC to Cケーブルを別途用意する必要があります。

多くの機種では専用アプリからでないと切替できないゲームモードやアダプティブANCまでボタン操作で切り替えられるので専用アプリを開かずとも殆どの主要機能をコントロールできます。

ヘッドホンの重さは実測値で約245gで、競合ブランドのオーバーイヤー型ワイヤレスヘッドホンが大体280g前後なので非常に軽量と言えます。たった30~40g程度の差ですが、ヘッドホンだとこの差は体感でかなり違いが感じられます。
専用アプリについて
・主な操作タブは3項目



『ステータス』タブではヘッドホンの充電残量が確認可能。
『サウンド』タブではイコライザーやノイキャンモードの設定、オーディオバランス調整を行う事ができます。
『設定』タブではコントロールカスタマイズやその他詳細設定が可能です。
・サウンド

『モード切り替え』で『オーディオモード』『ゲームモード』『ムービーモード』をアプリから切り替える事ができます。


イコライザーはデフォルトを除く設定済みの基本的なプリセット5種と自分で細かく調整可能な『カスタムEQ』に加え、『空間オーディオ(疑似空間拡張)』にも対応しています。



ノイキャンモードは5種類用意されており、状況や好みに応じて使い分ける事ができます。
『アダプティブ』は環境に適した具合に自動調整される適応型ノイズキャンセリングで、『室内』『通勤』『騒がしい』の3項目はそれぞれ3段階で効力を調整可能です。風が強い屋外等では『風切り音カット』を使用する事で適応型や各ノイキャンでは減衰できない風が当たる音を効果的に除去してくれます。

オーディオバランスでは左右のボリュームバランスを自由に調整可能なので、
左右で聴力に差がある場合にも対応可能。


コントロールカスタマイズでは各ボタン操作を好きに割り当ててカスタマイズする事ができます。
初期設定ではマルチファンクションボタンの4回押すが無効になっている為必要に応じて設定しましょう。



コントロールカスタマイズ以外にも沢山の機能が搭載されています。
『デバイスを探す』機能ではヘッドホン本体からアラーム音を鳴らすだけでなく、最後に接続が切れた場所を地図表示してくれるので紛失した際に格段に見つけやすくなります。Googleマップベースの立体的な地図で非常に見やすいです。
その他、『ビープ音量調整』『電源オフタイマー』『接続解除後の自動電源オフ』等、盛り沢山の機能が搭載されています。

マルチポイント、LDACの適用もこのタブから行います。同ブランドの最新ワイヤレスイヤホンとは異なりLDACとマルチポイントは併用不可です。

『他の設定』項目では初期化や本体情報の確認等が行えます。

それと、アプリUIに表示されている音符マークをタップする事でQCYアプリ上でも再生中の音楽コントロールが可能です。ヘッドホン側で細かい設定をするのにいちいち音楽アプリとイヤホンアプリを開いたり閉じたりするのは面倒なのでこれも地味ですが嬉しい機能です。
使用した感想
装着感


装着してまずはっきりと感じるのがその『軽さ』です。



同価格帯の競合オーバーイヤー型ワイヤレスヘッドホンをレビューしていると、大体平均的な重さは280g以上で、これでも十分軽い、もしくは標準的と言える重さですが、

本機は約245gと競合と比べて約40g程度軽いので、装着した際の軽やかさが全然異なります。
重さで疲れにくいので外出時や長時間作業のながら聴き用途にも向いていると思います。
側圧はやや強めですがしっかりホールドしてくれるので軽さも相まって安定感は抜群に良く、少し動いたぐらいでは全くずれません。実際に3時間以上着用したまま作業していますが特に耳周りが痛くなることも無く快適に使用できています。
軽さや疲れにくさを重視したい、という方にはかなりおすすめです。
音質
動画版で競合モデルと音質やノイキャンのバーチャル試聴比較を行っているのでご興味があれば是非↓
AndroidにてLDAC接続で使用した感想です。
タイトめに弾むような低音と、キレはありながらも音の粒子が細かく滑らかで艶のある中高域で最近のデジタルサウンドが気持ちよく聴ける、音楽鑑賞向きのやや明るめなサウンドといった印象を受けました。バランスとしては低域よりも中高域がやや出ているように感じました。サウンドステージは縦が広め、横が標準的に感じます。
癖は少なめなので基本的にどのジャンルでも合うと思いますがジャンルとしては特にEDMやアニソン、ポップス等と相性が良いと思いと感じました。
・通話音質について
ヘッドホンマイクから録音した音声を聴いてみました。
声はクリアで十分なボリュームを拾っており、聞き取りやすかったです。
通話用途で十分な性能だと思います。
主な機能
・ANCについて


今回比較した同価格帯ワイヤレスヘッドホンの中では最も効力が強力に感じました。『アダプティブ(適応型)ANC』は環境に適応させるまで7~8秒ぐらいタイムラグがありますが、適応後は環境音の減衰を明確に感じる事ができます。基本的にはアダプティブANCがおすすめですが、風の強い屋外では『風切り音カット』、仕事や勉強で集中する用途で使用するなら『室内』等シーンに合わせて使い分けられます。
更に良いなと思ったのが、ANCボタンを2回押す事で通常のノイキャンと適応型ノイキャンを瞬時に切り替えられる事です。一定の場所に留まっている時は通常ノイキャン、移動中は適応型、のようにボタン操作で簡単に切り替えられるのがとても良いなと思いました。
・マルチポイントについて
Android2台に同時接続して試してみました。
先発デバイス再生中に後発デバイスを割り込めるタイプで、切替レスポンスは約3秒程度でした。
屋内での使用中は特に途切れ等無く安定して使用できました。
・ゲームモードについて
遅延テストアプリを用いてAAC接続、ゲームモードONで10回計測した値の平均値から有線接続時の10回計測平均値を引く方法で求めた結果遅延は約103msという結果になりました。動画鑑賞やゲームをカジュアルに遊ぶ分には気にならないレベルの遅延です。eスポーツ用途で使いたい、という方は有線接続する事で遅延無くゲームを楽しむ事ができます。
・空間オーディオについて
項目名は『空間オーディオ』と表記されていますが、ヘッドトラッキング機能等を有したハイエンドモデルに搭載されているものとは異なり、サウンドステージを拡張させ疑似的に立体感を付与するものです。音楽モードよりも縦横共に更にサウンドステージの広がりが感じられ、より高い臨場感を感じられました。良かったのは、モード適用中も変にエフェクトがかかったような違和感のあるサウンドにはならず、音楽モードのサウンドステージをそのまま拡張させたような自然なサウンドだった事です。音のディティールが崩れないので、映像コンテンツだけでなく音楽鑑賞時に適用しても違和感無く楽しめました。
気になった点
・USBオーディオは対応しているが相性がありそう
本機はUSBによる有線接続に対応していますが、手持ちのPCやスマホ複数台に繋いで試したところ認識するデバイスと認識しないデバイスがありました。試しに他のUSBオーディオ対応ワイヤレスヘッドホンを同じデバイスに接続してみると全て認識した為、ヘッドホンとデバイスとの相性があるようです。
・ボタン2回操作での通常ノイキャンはモード・効力固定
ボタン2回で適応型ノイキャンから切り替えた際の通常ノイキャンは『騒がしい』の最大効力固定で、他のノイキャンモードや効力の強さを記憶できないのは勿体無いなと思いました。もし通常ノイキャンがアプリ側で設定した『屋内』や『風切り音カット』等他のモードを記憶して適応型と切り替えられれば、より快適に使用できた事でしょう。とは言え1万円未満ですし競合の最新モデルでも搭載していない機能ですから十分すぎるぐらいに高機能ではあります。
総評
QCY H3Sは、同価格帯では突出した完成度を持つワイヤレスヘッドホンです。
約245gの軽量設計による快適な装着感、ANCオフ最大102時間という圧倒的なバッテリー性能、LDAC対応、さらに同価格帯トップクラスと感じられるノイズキャンセリング性能を備えています。
機能面もマルチポイント、ゲームモード、空間オーディオ、充実したアプリ設定まで網羅されており、弱点はUSBオーディオの相性問題など一部に留まります。
総合的に見て、「1万円未満で選べるオーバーイヤー型の中でも屈指のコストパフォーマンスモデル」と言えるでしょう。
こんな人におすすめ
- 軽くて疲れにくいワイヤレスヘッドホンを探している人
- 通勤・作業・長時間使用を重視する人
- 1万円以下でも強力なANCを求めたい人
- 音楽・動画・ゲームを1台で幅広く楽しみたい人

