概要
「今時有線って…」と度々SNSで論争が巻き起こる有線イヤホンですが、お家時間の充実化志向や動画・ゲームといったコンテンツの増加に伴い「音楽や動画をより良い音で楽しみたい」「推しの声をより良い音で聞きたい」「低遅延や高解像度でよりゲームでの優位性を上げたい」「充電残量に囚われず長時間使いたい」等有線イヤホンに興味を持つ人も増えています。
「有線イヤホンにこだわってみたい」「ちょっと良い有線イヤホンが欲しい」
「でも有線イヤホンってワイヤレスイヤホンよりも音質や価格に幅がありすぎるし、奥が深すぎてどれを選んだら良いかわからない。」
この記事では、そんな方へ向けてイヤホンレビュアーである私が、実際に使用した中から比較的手の届きやすい価格帯で音質・品質・使いやすさに優れた間違いないおすすめの製品5種を厳選しご紹介します。
注意事項
今回ご紹介するのは、「有線イヤホン入門」にふさわしい、バランスの良い汎用性の高いモデルや音の違いを感じやすいモデルを中心に厳選しています。
ただし、音の感じ方や好みには個人差があります。
「どんな音が心地よいと感じるか」「どんな音楽をよく聴くか」は人それぞれですので、万人にとって完璧な1本というものは存在しません。あくまで私の感覚を元に厳選した製品である事をご理解ください。
また、イヤホンにはそれぞれに異なる個性や特徴があります。
音楽鑑賞向きのモデル、ゲームや動画視聴に適したモデルなど、用途によって最適な選択肢も変わってきます。
そのため、この記事では入門者に最適な基準を意識しつつ、各モデルの魅力や特徴をわかりやすくご紹介していきます。ぜひご自身の使い方に合ったイヤホン選びの参考にしていただければ幸いです。
入門おすすめ有線イヤホン5選
※ランキングではない為、紹介する順番はおすすめ度等とは特に関係ありません。
まずはこちら、
AZLA TRINITY

参考価格2200円(税込) カラー(ブラック/ブルー/シャンパンゴールド)
※記事制作時点
韓国のオーディオブランドから登場したエントリーモデルです。
AZLAは高品質なイヤーピースを中心に展開していて、イヤホンマニアの間では非常に高い認知度を誇りその品質の高さから支持を集めているブランドです。
そんなAZLAと代理店であるアユートが「良い有線イヤホンの良さをお手頃な価格でも知ってもらいたい」というコンセプトの元注力して開発した低価格帯の広告塔とも言える製品がこのTRINITYで、その注目度の高さと評判の良さから発売直後に各ECサイトで売り切れ状態となりました。
このTRINITYを選出した理由としては、「円筒型である点」「付属品含む品質の高さ」「サウンドクオリティの高さとバランスの良さ」「誰でも手に取りやすいお手頃な価格」です。

筐体は円筒型を採用しており、耳の形状や性別・世代を問わず扱いやすい設計です。
IEMタイプに抵抗を感じる初心者でも使いやすく、有線イヤホン入門機として適しています。さらに、同ブランドが展開している高品質イヤーピース『SednaEarfit』シリーズと同素材を使用した専用イヤーピースが4サイズ付属しています。『SednaEarfit』シリーズはイヤーピース単体で2,000〜3,000円ほどしますから、優秀なイヤホンにこれが付属しているTRINITYは異常なコスパである事がわかります。

さて、どんなにイヤーピースが良くても肝心のイヤホン本体が微妙なら今回紹介するに値しませんが、安心してください、TRINITYはイヤホン本体も凄いんです。
円筒型イヤホンは筐体が小さいので搭載できるドライバー構成に限りがあり、IEMタイプのように複数のドライバーを積んで超低域から超高域まで幅広いレンジをカバーしたり表現に幅を出すことが難しく、IEMタイプのような解像感や分離感を実現するのは難しいはずなのですが、IEMにも引けをとらない解像度の高さと見通しの良さで超低域から超高域までクリアなハイクオリティサウンドを実現しています。沢山のイヤホンを聴いてきましたがTRINITYを初めて聴いた時はこの価格帯の円筒型でこんなクオリティ出せるのかとかなり驚きました。
低域から高域まで各帯域のバランスも良く、癖のないクリアサウンドで音楽鑑賞、ゲーム、動画鑑賞、制作等どんな用途でも使いやすいオールラウンダーです。イヤホン初心者や学生さんでも手に取りやすい2200円という価格でこの品質、性能を提供しているのは本当に素晴らしく、沢山の人に良いイヤホンを知って欲しいのだろうなというメーカーの熱意を感じる、そんな1本です。
TRN CONCH

参考価格:3,840(税込) ※記事制作時点
TRNはIEMを中心に展開する中国のオーディオブランドで、KZ等と並び手頃な価格帯で高性能なイヤホンを提供する所謂”中華イヤホン”を代表するブランドの1つと言えるでしょう。CONCHはそんなTRNのブランド知名度を大きく押し上げたヒットモデルと言っても過言ではありません。
CONCHを選出した理由としては「有線イヤホンの楽しさをこれ1つで味わえる付属品の圧倒的充実度」と「価格以上のサウンドクオリティ」です。
まずはCONCHの内容物をご覧ください。

イヤホン本体の他にイヤーピースが3種類、リケーブルタイプのイヤホンケーブル、脱着可能なプラグが3種類、音質調整用のノズルが3種類に、剛性の高いケースまで付属しています。このイヤホンを買えばIEMの楽しさを全て味わえると言っても過言ではない充実ぶりです。
具体的にこの充実ぶりの何が凄いか、良いかを解説していきます。
まずイヤホン本体とケーブルを着脱可能なリケーブルタイプのIEMという事で、断線してもケーブルを交換すれば使える点や、別売りのイヤホンケーブルで音質やデザインをカスタムできる有線イヤホンならではのメリットや面白さを体験できます。更にプラグは3.5mmプラグの他、2.5mmと4.4mmが付属していて脱着して交換できる仕様なのでマニア向けオーディオ機器との汎用性も高く、初心者からマニアまで幅広い守備範囲を実現しています。
イヤーピースはさらっとしたシリコンタイプ、吸着力の高いシリコンタイプ、低反発のコンフォートタイプの素材感の違う3種類が付属しているので、素材の違いによる音質や装着感の違いを楽しめますし、自分の好みも見つける事ができます。
また、チューニング用の交換ノズルが付属しているので付け替えて音質の違いを楽しめますし、自分の好みに合わせられるので買ってみたけど好きな音じゃなかった、という失敗が起こりにくい点もメリットですね。
剛性の高いケースが付属しているのも良くて、アクセサリーのようにケースに入れて保管したり持ち運べるので傷や破損から守れるだけでなく愛着も湧いてきます。これは実用性というより沼へ沈む為の一歩な気がしますが。

付属品について力説しましたがイヤホン本体も同価格帯の中でも屈指の音質と品質です。
シャキッとキレのあるサウンドは価格帯以上の解像度の高さと分離感を味わう事が出来、それまで使ってきたエントリー帯有線イヤホンとの音質の違いを明確に感じられるクオリティと言えるでしょう。比較的広い用途やジャンルで使いやすい音質特性ではありますが、その解像感の高さからEDM等近年のサウンドコンテンツとの相性は抜群に良いです。
そして耐久性の高い亜鉛合金製の金属筐体なので丁寧に扱えば長く使い続けられる事と、金属筐体IEMの中では比較的小型なので幅広い耳の形やサイズにフィットしやすい点もおすすめできるポイントです。
有線イヤホンをただの道具から”趣味”へと昇華させてくれる1本です。
SHURE SE215

参考価格:マイク無:¥15,840(税込)/マイク有:¥16,830(税込)
カラー(クリア/ブラック) ※記事制作時点
SHUREは1925年創業のアメリカの老舗音響機器ブランドです。
プロが使うスタジオクオリティの製品を幅広く展開しています。イヤホンやヘッドホンも有名ですが特にマイクが有名で、スタジオやライブシーン、最近では配信機材でSHUREのマイクを使っているという人も多いのではないでしょうか。
そんなSHUREがこのSE215を発売したのは2011年で、記事制作時点で発売から14年以上経過している現在でも超定番モデルとして世界中で愛されて続けているロングセラーモデルです。その人気は衰えず発売から10年以上経過しても新色が登場し続ける程です。
「今更SE215かよ」という人も居ますが、これだけ長く愛され続けているのには必ず理由がありますし、それは私も使用した上で感じています。
という事で、このSE215を選出した理由としては「ザ・モニターなスッキリリファレンスサウンド」と「人を選ばない装着感」です。(同じナンバリングでもSE215 SPEは音質傾向が異なるので購入の際は注意してください。)
プロのクリエイターやミュージシャン向けのエントリーモデルとして発売された本製品は、”音を正確に聞き分ける”事を本来の目的としている為、音楽鑑賞向けのイヤホンに比べ見通しが非常に良いクリアさと誇張の無い自然で正確なサウンドが特徴です。その見通しの良さからクリエイターやミュージシャンだけでなく、近年ではゲーミングイヤホンとしても人気が高いです。
沢山選択肢がある中で何故SE215を選んだかというと、最も大きな理由はこのサウンド特性にあります。これから有線イヤホンにこだわっていこうという入門者にとって、1本目の有線イヤホンはかなり重要です。というのも、1本目の音が自分の中の基準となる音だからです。この正確で癖の無いクリアサウンドと手に取りやすい価格のバランスはこれから有線イヤホンを色々試していく中で基準となるリファレンスイヤホンに最も相応しいと思います。

もう1つは装着感の良さです。IEMの多くは筐体が大きく人によって装着感が合う合わないがはっきりと分かれますが、SE215はビーンズ状の小型筐体で耳の形状や大きさを問わずフィットしやすいサイズ感です。またイヤホン本体は軽量で長時間装着しても疲れにくく、これも沢山の人に愛されている大きな要素の1つだと思います。
イヤホンケーブルは「ケブラー素材」で強化されており、やや硬めですが断線しにくい耐久性の高さも評価できます。リケーブル仕様で脱着してケーブルを交換する事も可能です。
癖の無いサウンドでどんな用途でも使いやすいオールラウンダーですが、そのサウンド特性から特に音楽制作やゲーム等、正確に音を聴きたいモニター用途での相性は非常に良いです。
「音質」「装着感」「耐久性」のバランスが良く扱いやすい、最初の基準となるイヤホンに相応しい1本です。
qdc SUPERIOR

参考価格:¥14,300(税込) カラー(Vermilion Red/Azure Blue/Piano Black/Rondo Purple)※記事制作時点
こちらもかなり話題になったのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
qdcは高品質なIEMを開発・製造している中国の高級オーディオブランドで、価格帯は基本的に十万円~数十万円を中心としたハイエンドクラスのミュージシャンやエンジニア、マニア向けカスタムIEM(オーダーメイド品)を主軸に展開しています。そんな高級ブランドqdcがブランドの広告塔としてエントリークラスで1ランク上のサウンドを体験してもらうべく開発したのがこのSUPERIORです。
選出した理由としては「他との違いを感じられるサウンドクオリティ」「カスタムIEMブランドならではの装着感の良さ」「洗練された品質の高さ」です。
このイヤホン、公式では正確さや自然さを強調していますが、個人的にはスッキリフラットなガッツリモニター系というよりは、音楽鑑賞向きの派手さも併せ持っているように感じます。
音源の”深み”や”旨味”まで感じられる表現力の高さが素晴らしく、曲の世界観を余すことなく味わう事ができます。入門機と言えば”クリアさ”や”バランスの良さ”に焦点を当てた製品が多いですが、クリアさやバランスの良さだけじゃなく、音の深みや厚みも教えてくれる、まさに1ランク上のサウンドです。なので、このイヤホンを聴いた時にそれまで聴いてきたイヤホンと明確な違いを感じやすく、音の良さを感じられると思います。

そして沢山の耳型データを元に作成した内側シェルは耳の形に合わせて立体的に隆起した形状で、人により多少異なるとは思いますが抜群のフィット感と遮音性を実現しています。ここはカスタムIEMブランドの強みでもありますね。
そしてぱっと見でも伝わると思いますがコストの限られたエントリーモデルながら単色ミラーパネルとロゴによる洗練されたデザインで高級感もあり所有欲を満たしてくれます。イヤホン本体だけでなく、癖の付きにくいしなやかで柔らかい取り回しの良い付属ケーブルにもこだわりを感じます。サウンドクオリティ、装着感、品質、全てにおいて1ランク上のグレードに引き上げてくれる1本です。
SIMGOT EA500

参考価格:¥14,400(税込) ※記事制作時点
SIMGOTはIEMを中心に展開する中国のオーディオブランドです。中華イヤホンの中でもSIMGOTは音質において費用対効果が高くユーザーから高い支持を集めています。EA500は中でもマニアを唸らせたモデルで、世界各国のECサイトで平均評価が★5段階の内★4以上、しかも殆どが★4.8~★5という驚異的な数値を叩き出しています。(Amazonは非正規販売業者のせいでやや評価が下がっていますが)
一見サクラじゃないの?と思うほどの高評価ですが、実際に聴いてみるとその評価が本物である事がわかります。
選出した理由はひとえに『価格帯を超越した圧倒的高音質』です。
低域から高域まで非常に高い解像度と分離感で、楽曲やコンテンツの細部まで余すことなく感じ取る事ができます。中高域はキラキラしていて艶もあり、高域楽器やボーカルをとても美しく表現してくれます。

ノズルが2種類付属していて、交換する事で好みに合わせて音質傾向を変える事もできます。

金属筐体なのでややずっしりとしてますが、その分剛性が高く耐久性もあります。
この価格帯は有線イヤホンの激戦区で、先ほど紹介してきた同価格帯のSHURE SE215やqdc SUPERIORと比較すると総合的なバランスの良さや装着感の点ではそれらに軍配が上がりますが、音楽鑑賞におけるサウンドクオリティに関してはEA500が頭一つ抜けているように感じます。個人的な感覚では現在の価格に数万円上乗せしても全く違和感の無いレベルです。
他の4機種のようにもっと爆発的に売れて良いイヤホンだと思いますが、今まで紹介してきた4機種に比べると認知度はやや劣り、イヤホン好きやオーディオマニアの中だけで留まっている印象です。その為国内のECサイトでは在庫が少ない状態が続いていて、現在ではやや入手しづらいのが難点かもしれません。経験上こういうイヤホンは時が経つにつれてどんどん入手経路が減っていずれ買えなくなってしまうので、気になる人は買える内に買っておいた方が良いです。本当に。
特に音楽鑑賞用途でエントリー帯で音質を最も重視したい、という人におすすめの1本です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介した5つのモデルはいずれも、数ある有線イヤホンの中から厳選した優れた製品です。
これから有線イヤホンにこだわってみたい方や、気になっている方にも自信をもっておすすめできます。
良質なイヤホンを選ぶことで、日々がより豊かで心地よいものになります。
ぜひ自分に合った一台を見つけて、理想のリスニング環境を手に入れてください。