概要
今回はKZより発売の有線イヤホン『KZ Duet』をレビューしていきます。

KZといえば圧倒的にIEMの印象ですが、なんと今作はセミインイヤー型(ハーフインナーイヤー型/半開放型)です。有線イヤホンのセミインイヤー型自体需要の割に市場でかなり種類が少なく珍しいので、それをKZが開発したという事で個人的にかなり注目の製品です。
製品の特徴やスペック・実際に使用した感想について語っていくので、ご興味がありましたら是非最後までご覧ください。
スペック・製品仕様
項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | KZ-Duet |
イヤホン形式 | セミインイヤー型 |
ドライバー | 低域用10mmDD+中高域用8mmDD |
接続端子 | 3.5mm/3.5mm+EQ Type-C |
カラー | Black/White |
マイク | 有り/無し |
周波数特性 | 20Hz – 40,000Hz |
インピーダンス | 25Ω |
感度 | 110dB/mW @1kHz |
通常価格(レビュー制作時点) | 5500円(税込)※マイク有 |
装着形式は セミインイヤー型。耳を密閉しすぎない設計なので、圧迫感が苦手な人やカジュアルに長時間使いたい人には合いそうです。イントラコンカ型はそれなりに見かけますが、セミインイヤー型は中華イヤホンブランド全体でもかなり珍しいのではないでしょうか。
しかも2DD構成です。低域用に10mm、大口径ながらも扱いやすいサイズの8mmを中高域用に組み合わせています。KZの2DD構成自体は最近ちょこちょこ見かけますが、KZといえばハイブリッド多ドラ構成IEMで話題を集めてきたブランドですし、このモデルは2DDセミインイヤー型という何もかもが異端です。
接続面では3.5mmに加え3.5mm to USB-Cアダプターが付属しているモデルも存在するようです。最近はスマートフォンにイヤホン端子がない機種も多いので、ユーザー層をしっかり意識しているように感じます。マイク付き/無しを選択可能です。
インピーダンス25Ω、感度110dB ならスマホ直挿しでも十分鳴らせそうです。再生帯域は20Hz〜40kHzと広く、ハイレゾ相当の音源にも対応。こうした数値を5,500円(税込)という価格で実現しているのは、さすがKZといったところでしょう。
内容物

- イヤホン本体
- イヤーチップ2種
- 保証書

イヤホン形式・フィット感を調整可能なイヤーチップが2種類付属。
外観

イヤホンの形式は耳掛け式IEMを中心に展開しているKZとしては非常に珍しい『セミインイヤー』形式です。他ブランドや国内では『ハーフインナーイヤー』型等と呼ばれることもあります。完全ワイヤレスイヤホンではこの形式をある程度見かけますが、有線イヤホンのセミインイヤーとなるとかなり数が限られ、有名どころで言うとAppleの『EarPods』が最も有名です。というかほぼ1強の状態です。


シェルは透明度の高い樹脂製のクリアシェルで、ドライバーや中の構造が透けて見えます。内側シェルにはベント(通気孔)らしきものが見受けられます。出音部の口径は大きく、シェルの形状も『EarPods』や『AirPods』シリーズを彷彿とさせる丸みを帯びたフォルム。セミインイヤー型のクリアシェルはかなり珍しい気がします。


また、これまた珍しい要素ですが付属のシリコン素材のイヤーチップを装着する事により、好みでフィット感、安定感、密閉感等を調整する事ができます。イヤーピースのような笠がついたチップを装着する事で密閉型のように調整できるのはかなり面白いですね。

マイク有モデルはこのようにマイクとボタンが搭載された操作部が右側に搭載されています。表と裏の2カ所にコンデンサーマイクが搭載されたデュアルマイク形式です。ボタンでは再生/停止、通話の応答/終了、音声アシスタントの呼び出し等が可能です。

プラグは3.5mmで汎用性の高いL字プラグです。

重さは実測値で約18.7gと軽量で、ケーブル被覆も摩擦が少なく絡まりにくく扱いやすいので携帯性は高く、鞄のポケットからサッと取り出して使うのに良さそうです。
使用した感想
装着感


密閉しないセミインイヤー型ならではの耳に引っ掛けるだけといった装着感で、密閉はしないものの耳の中に入れるシェルは2DD構成という事もあり比較的大きめでフィット感がある為基本的に静止して使っている分には脱落する事もなく安定します。カナル型のような耳道にイヤーピースを挿入するのが苦手、という人にもおすすめです。成人男性で恐らく標準的サイズと思われる私の耳でジャストフィットといった具合なので、耳の小さな方だとやや圧迫感を感じる方がいるかもしれません。完全に塞がないので密閉型に比べ外の音も聞こえやすく、長時間装着しても蒸れにくいです。付属のイヤーチップを装着することでよりフィット感や遮音性を高める事ができ、笠のあるチップを装着する事で疑似的に密閉するカナル型として使用する事もできます。
音質について
DAP(NW‐ZX707)とAndroidにて直挿しで使用した感想です。
セミインイヤー型というと、密閉しない形式上抜けが良く良い意味であっさりした音、というイメージがありますがこのイヤホンはデュアルドライバーでフィット感も高めなので密閉型と同じぐらい音のキレと厚みがあります。バランスはフラットに近いですが中域がやや前に出ている印象です。サウンドステージは横が広く、縦はかなり広く感じました。出音部の口径が約10mm×6mm程と大きめな事もあり音を浴びるような感覚でキレと厚みがありながら広いサウンドステージも併せ持つ臨場感の高い音でカナル型とイントラコンカ型の良いとこ取りをしたような音の特性に感じました。完全な密閉型ではありませんがチップを装着しなくても低音の再現性はそこそこあり、深さは出にくいですがアタック感はそれなりに感じる事ができます。チップを装着する事で更に遮音性と低音の再現性を高める事ができ、
チップ無し<セミインイヤー型チップ<カナル型チップ の順で低音の再現性が高くなります。
通話音質について
ケーブルのマイクから声を録音して聞いてみました。
正直有線イヤホンのインラインマイクって口元から離れている事もありそもそも音をあまり拾ってくれないものが多く、どの価格帯でも実用レベルの物は少ない印象であまり期待はしていなかったのですが、同ブランドで最近採用され始めた、1つの操作部に表と裏で2つのコンデンサーマイクを搭載したインラインマイクは性能がとても高く、十分なボリュームを拾ってくれて音質もクリアです。正直インラインマイクの性能を超えています。この性能があれば通話やゲームでも快適にコミュニケーションが取れると思います。
良かった点・気になった点
良かった点
・長時間着用しても蒸れにくい
カナル型を長時間装着しているとどうしても蒸れてきて耳の中が痒くなったり、聴き疲れしやすいですが密閉しないセミインイヤー型なので蒸れにくく、長時間の着用にも適しています。イントラコンカ型も蒸れにくいですが耳から脱落しやすく装着感がやや不安定な面もあるので、比較的安定した装着感×蒸れにくい×有線を満たす貴重な1本です。
・マイクの音質が良い
コンデンサーマイクを2個搭載したマイクはとても性能が良く、大きくクリアに声を拾ってくれます。通話はもちろんゲームのボイスチャット等にもおすすめです。有線イヤホンのインラインマイクは正直ハズレが多いので、マイクの性能がここまで良いのはこれまた貴重です。
・軽量で一体型なので気軽に使いやすい
最近では着脱可能なリケーブルタイプのIEMが増えていますが、カスタマイズ性が高い一方で物にもよりますが筐体が大きかったり、重かったり、接続部破損の懸念から専用のケースに収納する人が多く携帯性や扱いやすさといった点ではいまいちです。その点このイヤホンは軽量一体型なので例えば鞄のポケットに直入れしておいて必要な時にサッと取り出す、といった使い方をしやすく、普段使いしやすいイヤホンと言えます。
気になった点
・イヤーチップについて
この製品の特徴の一つでもあるイヤーチップについてですが、セミインナーイヤー型とカナル型のようにイヤホン形式を変える事ができるという発想は面白いのですが、セミインナーイヤー型チップとカナル型チップでそれぞれ1組ずつしか付属していないのでシリコン素材という事もあり使っていくうちに劣化するでしょうし耐久性の懸念点があります。それとせっかく密閉しないのが売りのセミインナーイヤー型イヤホンなのだから、カナル型にする必要無くない?というのが率直な感想です。カナル型チップでは無く、セミインナーイヤー型のチップを2組付属させて1つを予備として使用できた方が個人的には嬉しいかなと思いました。
総評
KZ Duetは、セミインイヤー型という珍しい構造に2DDを搭載した意欲的なモデルです。カナル型の密閉感や蒸れが苦手なユーザーに向けて、開放感のある装着感と安定したフィット感を両立。付属チップによって装着感や音の密閉度を調整できる点もユニークです。音質はフラット寄りながら中域に厚みがあり、広いサウンドステージを実現。セミインイヤーらしい自然さとカナル型の力強さを兼ね備えています。また、デュアルマイク搭載による通話品質の高さや軽量で扱いやすい一体型デザインも強みです。一方で、付属チップの種類や数が限られている点には改善の余地があります。
こんな人におすすめ
- カナル型の圧迫感や蒸れが苦手な方
- 有線で気軽に長時間音楽や動画、ゲームを楽しみたい方
- 音楽視聴だけでなく通話やボイスチャット用途でも使いたい方
→ 普段使いしやすく、長時間使用に適した有線イヤホンを探している人におすすめの1本です。